●桑原茂夫 個人誌「月あかり」情報
第3号発行:
◆【まえがき】から
なにが粋かよ 気がつく頃は
みんな手遅れ 吹きざらし――
手遅れにならないうちに、と第5巻を始めて、早くも第3号。個人誌の利点をもっともっと活かして、自由闊達に書き記し編集していこうと考えているのですが、書いておきたいこと、書かなければならないことは、次々と降り積もってきて、早く早くと、焦る気持ちも募ってきています。いっぽうで淡々と、しみじみと、と思う気持ちもあり、まあ思いのままに、と――
◆【あとがき】から
戦が終わってオトーサンは戻ってきたけれど――
やがて戦が終わり、五島列島の特攻基地も特攻隊も用済みとなり、上官たちも仲間の兵士たちも予科練生たちも、ただちに復員することになり、オトーサンもなんとか帰ってくることができた。
母にとっては日々願っていたことではあるが、やはりなんといっても奇跡的な生還! だった。しかしオトーサンの反応は鈍かった。狂喜乱舞とはいかないまでも、家族との再会を大よろこびすると思っていた母は拍子が抜けて、ナンナノコノヒトハ! しかもオトーサンの反応の鈍さは一時的なものではなく、そもそも感情というものが失われてしまったのではないかと、母が疑うほどだった。
戦に行く前のオトーサンのことをよく知っている、同業者(やおや)のタカハシさんもオトーサンのただならぬようすに、びっくりしていた。「どうしちゃったんだろ。あのオトーサンはどこに行っちゃったのかね。口をほとんどきかないって、まずこれが信じられない。おしゃべりがじょうずでね、冗談もうまい。お客さんにはモテてモテて、そりゃあうらやましかったくらい」復員してからの寡黙なオトーサンしか知らないぼくは、このタカハシさんの話にびっくり。オトーサンは五島列島の海に、おしゃべりを流してきてしまったのだろうか。あるいは戦のコトバに本来のおしゃべりを完全に封じ込まれてしまったのだろうか。戦のリアルな一面である。大きすぎて深すぎて、当人も周囲も、それが傷だとは気づかないまま、時がとうとうと流れてゆく……
◆【CONTETS】
●五島列島へ行く――オトーサンの出征先、五島列島に足を踏み入れ取材したドキュメント。
●コラム――合田佐和子「90度のまなざし」を読む。
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